モーセの十戒と生涯が分かる9のエピソードを紹介

 

　【モーセ】の波乱万丈な生い立ち

ヨセフが統治していた頃から四百年たったエジプトでは、イスラエル人が大量に増え続けていました。

 

 

エジプト王は、増え続けるイスラエル人に対し、重労働を課して虐待して、数を減らそうと策を計りました。

しかし、それでもイスラエル人は増え続けました。

業を煮やしたファラオは、乳母たちに男子が生まれたら、殺してしまえと命じました。

しかし、乳母たちは言い逃れをしながら男の子を救いました。

そのような状況の中で、モーセは生まれました。

モーセは大声で泣いて、なかなか泣き止まない赤子だったため、両親は隠しきれないと判断して、ナイル川の岸に置き去りにしました。

その赤子のモーセを、通りかかったエジプトの王女が拾い、かわいいから自分の子供として育てることにしました。

その様子を影でモーセの姉のミリアムは見ていました。

 

 

作者　プッサン
作品名　「川から救われるモーセ」
製作年　1638年
所蔵　ルーヴル美術館　パリ

 

しかし、王女は乳が出ないので、どうするか模索していたところに、それを見ていたミリアムは、王女の前に出て、自分の母親を乳母にと、申し出ました。

すると、王女はなんなくその提案を受けてくれました。

そうしてまた、実の母親のもとに帰ってこられたモーセは、乳離れするまで母親の元で育ち、その後は王女の息子として宮殿で育ちました。

 

【モーセ】の殺人、そして逃走

ある日、モーセは同胞のイスラエル人が、ひどい仕打ちを受けて、強制労働をさせられているのを見かけます。

それを見て怒ったモーセは、そのエジプト人監督官を棍棒で殴り殺してしまいました。

そして、その死体を砂の中に埋めて隠しました。

 

 

その翌日、それを見ていたエジプト人の証言により、モーセの殺人が発覚して、モーセは逃亡しました。

その後、モーセはミディアンの地まで逃げてきました。

その町でとある井戸で、数人の男たちと揉めていた娘たちを助けます。

 

 

作者　フィオレンティーノ
作品名　「エテロの娘たちを守るモーセ」
製作年　1523年頃
所蔵　ウフィツィ美術館　フィレンツェ

 

 

 

そして、助けた娘の一人と結婚して、ミディアンにとどまり、四十歳になるまで羊飼いとして平穏に暮らしました。

【燃え尽きない柴】と【神の召命】

ある日、モーセは羊を追って神の山ホレブまで来ました。

そこで、柴を燃やして焚き火をしていましたが、その柴がいつまでたっても燃え尽きませんでした。

その時、突然神の声が聞こえてきました。

「履物を脱ぎなさい、イスラエルの民を率いてエジプトを出、約束の地カナンを目指しなさい。」

と神の召命を受けました。

 

 

作者　フロマン
作品名　「燃える柴」
製作年　1476年
所蔵　サン・ソヴール大聖堂　エクス・アン・プロヴァンス

 

しかし、モーセは自分の言うことを皆が聞いてくれるか自信がありませんでした。

その事を神に告げると、神からそんな時は、杖を投げよ、すると杖は蛇になりしっぽをつかむと再び杖に戻ると、助言されました。

さらにモーセは、自分が口下手な事を神に告げると、お前には、弁の立つ兄がいるので、二人で力を合わせて何とかしなさい、と告げられました。

 

 

十八世紀のヘブライ語聖書の挿絵

 

 

【エジプト王との交渉】と【数々の厄災】

モーセとアロンは、エジプトの王ファラオに、3日間荒れ野でイスラエルの神の祭りを行えと、神が弟のモーセに告げられたので、民を解放して欲しいと頼みました。

しかし、ファラオは一向に信じませんでした。

モーセたちは、もし奴隷を解放しなければ大変な厄災が起こるとも告げましたが、それでもファラオは信じませんでした。

モーセたちはファラオに神の存在を信じさせようと、杖を蛇に変えて見せましたが、ファラオは手品だと思い、奴隷を解放されるどころか逆に、奴隷たちにさらに重労働を課せられてしまいました。

その後、ファラオが奴隷を解放しなかったため、神のお告げ通り数々の厄災に見舞われることとなりました。

 

 

 

そして神は、最後の厄災をくだしました。

その内容は、エジプトの人から家畜の全ての初子を殺すという内容でした。

神のお告げ通り、エジプトの全ての人から家畜にいたるまで、息絶えました。

その中には、ファラオの子供もいました。

そしてついにファラオは神の厄災に屈して、イスラエルの民を解放しました。

　【エジプト軍】に追われ、海を割って逃げる【モーセたち】

解放されたイスラエルの民たちとモーセの後ろから、エジプト軍の大軍が迫ってきました。

ファラオが考えを変えて、追っ手をかけたのです。

そしていよいよ、モーセたちのすぐ後ろまで迫ってきた時、目の前は海でした。

前は海後ろはエジプト軍という絶体絶命の場面で、モーセは手を海に向かって差し伸べました。

すると海が左右に割れて、海底の土が現れ対岸までの道ができました。

そこをモーセたちは渡り、全員が渡り終え、モーセはもう一度手を差し伸べました。

すると海水が戻り、すぐ後ろにいた、まだ海を渡りきっていなかったエジプト軍は海に飲み込まれてしまいました。

 

 

作者　ギルランダイオとコジモ・ロッセッリ
作品名　「紅海の横断」
製作年　1481～82年
所蔵　システィーナ礼拝堂　バチカン

 

モーセたちは神を賛美し、そして再び約束の地カナンを目指しました。

　【カナン】への道中の不思議な【エピソード】

カナンへの道中、民たちは飢えと乾きに苦しみ、その不満をモーセに訴えました。

すると夕暮れには、大量のウズラ(鳥)が飛んでくるようになり、朝にはパンが空から降ってくるようになりました。

 

 

 

作者　ティントレット
作品名　「マナの収拾」
製作年　1575～78年
所蔵　サン・ロッコ同信会館　ヴェネツィア

 

 

その後、カナンに着くまでの何十年もの間、人々はマナを食べ続けました。

【神】からの【十の戒め】を授かる

モーセたちはエジプトを出てから、3ヶ月目にシナイ山のふもとにつきました。

モーセは、神の声を聞くために一人で山に登りました。

そこでモーセは、神から二枚の石版を授かります。

この石版には十の戒めが書かれていました。

 

 

しかしモーセが山にこもっている間に、民は待ちきれずに若い雄牛の金の像を作り、拝み始めてしまいました。

 

 

作者　プッサン
作品名　「黄金の子牛の礼拝」
製作年　1634年
所蔵　ナショナル・ギャラリー　ロンドン

 

最もしてはいけない事をしてしまった民たちに、神は民を滅ぼし尽くすと、怒り狂いました。

そして、モーセが下山してその事を知ると、モーセも怒り、神に貰った二枚の石版を地面に投げつけ、砕きました。

 

 

 

作者　レンブラント
作品名　「モーセの十戒と石の版」
製作年　1659年
所蔵　国立ダーレム美術館　ベルリン

 

そして三千人の不信信者は、兄のアロン以外、全員神に討たれました。

モーセはもう一度山に登り、神を説得して再び石版を授かりました。

【カナン】の偵察、そして【40年の放浪】

ついにカナン目前までやってきたモーセたちは、屈強な男、ヨシュアたちにカナン偵察を命じました。

偵察から帰ってきたヨシュア達のうち、ヨシュアは攻め込むべきだと主張しました。

しかし他のもの達は、反対します。

そしてその報告を聞いた民たちは、毎日泣き言ばかり言いました。

その様子を見ていた神は激怒し、不平不満ばかり言う民たちに対して、「今後四十年間カナンに入ることは許さない」とモーセに告げ、それをモーセは民たちに伝えました。

神の言葉に恐れをなした民たちは、カナンの地に入りましたが、全員カナンの民たちに討たれてしまいました。

そして残った民たちとモーセは、その後四十年間荒れ野を放浪する事を余儀なくされました。

【カナン】目前で【モーセ】が亡くなる

ある時、モーセたちは水不足に悩まされていました。

そこでモーセは、杖を使って岩肌を叩き、水を出そうとしましたが出ませんでした。

そしてもう一度杖を使って同じことをして、水を出そうとしたら、今度は岩の隙間から水が溢れ出てきました。

 

 

作者　バッキアッカ
作品名　「モーセ岩を打つ」
製作年　1525年
所蔵　スコットランド国立美術館　エディンバラ

 

杖を二度使ってしまったことが、神の力を疑ったと見られ、神は激怒してモーセとアロンに、カナンに入ることは出来ずに死ぬ運命を与えました。

 

 

その後アロンはホル山で亡くなり、自分も長くはないと悟り、後継者にヨシュアを選びました。

モーセは神の言葉に従い、ネボ山の頂上に登り、目前に見える約束の地を見渡しながら、息を引き取りました。

 

 

【モーセ】の人生の【ハイライト絵画】

 

【モーセ】の前半生の【ハイライト絵画】

 

 

作者　ボッティチェリ
作品名　「モーセの試練」
製作年　1481～82年
所蔵　システィーナ礼拝堂　バチカン

 

【モーセ】の後半生の【ハイライト絵画】

 

 

作者　シニョレッリ
作品名　「モーセの遺言と死」
製作年　1481～82年　
所蔵　システィーナ礼拝堂　バチカン

 

 

まとめ

参考文献